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てとやらま

2009年02月18日 美術の星の人へ

年末に東京にいったときに
ワタリウム美術館で『美術の星の人へ』という島袋道浩さんの展覧会をみた。
展覧会会場にゴルフの練習用のセット(緑の幕で四方を囲み、床には人工芝のあれだ)に、作家がゴルフの先生にやり方を教わっている初心者用教習ビデオのような映像。ゴルフセット備え付けで 球も12こセットしてある。
本当に「やるつもりのなかったことをやってみる」ことになってしまった。しかも結構本気で。
イタリアで蛸壺漁をしたり フィッシュアンドチップスの じゃがいもが魚に会いにいったり、太刀魚をビルの屋上から両手に掲げ、韓国の人に英語でない方法でコミュニケーションを図ろうとしたり
少し奇妙で でもその映像たちは 笑いや温かみにあふれていて美しかった。「シマブクのフィッシュ・アンド・チップス」は、ジャガイモが海を泳ぎ、魚に会いに行く。じゃがいもと出会った魚はまるで旧来の友達が訪ねてきたのかのように、ジャガイモと戯れ、一緒にどこまでも泳いで行く映像で
海はエメラルドグリーンで明るく
魚とじゃがいもは幸せそうに泳いでいた。


「運がよければ買えるアーティストブック」というのがあって
もらった会場案内図に場所が示してある。
「トマト七星」はトラックの野菜屋さんに売っているらしい。「2時頃から暗くなるまではほぼ毎日いるはずです。」というすこし曖昧な案内。

ワタリウムを出て細い道にはいり、公園をぬけて団地前へ。写真のとうりにその野菜屋さんはあった。
******

トマト七星をください

あいよ。
300円て聞いとります。おじさんにはまったく(この本のよさが)分からんけどね!あはははは

*********
と豪快に笑う人のよさそうなおじさん


外苑前の交差点でビッグイシューをうる山下さんがいる。
こちらは「販売員の人たちは雨の日は基本的に休みで、もっているビッグイシューの本が売れてしまうと仕入れのため上記の時間内でもいなくなることがあります。」という案内。


ビッグイシューを売っている山下さんに話しかける。

********
「象のいる星はありますか?」


あら ミュージアムにいらっしゃったんですね。ありがとうございます
お待ちしてましたよ。
福岡から来たんですか。まぁわざわざ。
今日は寒いですね。
はいどうぞ。

(略)

ありがとうございます
風邪などひかないように
よいお年をお過ごしくださいませ。


「ありがとうございます。
山下さんも、よいお年を。」

*********
普段だったら通り過ぎる場所や
通り過ぎる人々
でもそこで交わされる会話が
やたら暖かく
こんなにゆるやかに暖かい会話ができる
ふだんは絶対に関わらないであろう人たちと。
東京に住んでて美術館を回る若い子とかで
たとえばビッグイシューを買ったりとかその存在すら知らない子がいたとして
きっと山下さんに声をかけるのは少しだけ勇気がいる。でもこのきっかけで、気づくことってたくさんあって
暖かい反応が返ってきて
ふだんは足早に通り過ぎるかもしれないこの人も
山下さんなんだと
思うだろう。
別れたあとも笑顔がおさまらないような気持ちになる。
そのきっかけをつくることができる
それはちょっとしたきっかけなんだけどやたら大きくて
なんだか胸がいっぱいになり
(月並みな言い方ですが、これ以上にぴったりな言い方があるか?)ああ すごいなーすごいなーこんなことができるなんてと
感動してしまった。



出品作品リストの表紙は
とある雑誌のオシムのインタビュー記事。
「目標を持たなければプレーをする意味はない。出来る限り遠くを目指すためにも、『どうしてサッカーをするのか?』という根源的な問いを、常に念頭においておくようにする。」


この展覧会は3月15日まであっている。
できればもう一度見たいなと思う。


最近フィッシュ・アンド・チップスが頭に浮かんで離れない。これだけでも、もう一度見たいな。

朝の時間をつかって、ふとインタビューをよみかえしてみた。
by tetoyarama | 2009-02-18 00:00 | oyama
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